『冠婚葬祭入門』における「婚」の章は、従来の類書と大きくちがっている。マニュアルに徹することで、説教くさい部分、理屈っぽい部分はすべてカットする。さらに特筆すべきは、自宅結婚式もろとも「床入りの式」「新婚初夜の心得」に類する淫靡な性交渉の情報がきれいに消去されたことである。思えば従来の冠婚葬祭マニュアルは、占いや優生思想もさることながら、「床入り」「初夜」の呪縛から逃れられなかったために、どう転んでもいかがわしい雰囲気がぬぐい去れなかったのだ。初夜情報が消えたのは「結婚まで性交渉はご法度」という規範がゆるんだこととも関係するだろう。『女性自身』『女性セブン』から、『明星』『平凡』『平凡パンチ』『週刊プレイボーイ』まで、一九五〇〜六〇年代に続々と創刊された若い女性向け、男性向けの週刊誌には、すでに性情報がいっぱいだった。親や仲人が「あの子はうまく初夜をのりきれるかしら」なぞと思い悩む奥床しい時代は、よくも悪くも終わったのである。占いも消えた。六輝を完全否定してはいないものの、〈式日を選ぶ場合は、大安とか仏滅などを気にするよりも、当事者や列席者に都合のよい日時を第一に考えるべきです〉(「結婚式の日取りは、参列者の都合のよい日が吉日である」)と述べる。身元調査や健康診断についての項目だけは残念ながら残った。〈(仲人が)不安を感じる相手なら、見合いの前に身元調査をするに越したことはありません。調査は興信所に依頼するなり、先方の勤務先や出身校、友人、隣り近所などで、それとなく評判をききます〉(「身元調査は見合い前にするとよい」)〈肉体の病気以上に重大なのは精神の疾患で、もし結婚相手やその家族に疑問があれば、しろうと判断をせず専門家に相談することです〉(「結納といっしょに健康診断書を交わす」)このへん完全払拭できなかったのは時代の限界だろうか(現在発行されている『冠婚葬祭入門』にこの項目はない)。それでも書き方は旧来に比べてかなり慎重である。
到来ものがあったときのお礼、日にちがたってから聞いた訃報など、どうしても封書での手紙を書かなければならないことがある。そのマナーを知らないと、せっかく書いた手紙も台無しである。手紙を書くときは、基本的には、まず冒頭のあいさつから入る。一般的によく使われるのが「拝啓」で、目上の人には「謹啓」や「謹呈」、急ぎのときは「急啓」「急呈」、返信の場合は「拝復」となる。「前略」を使う人も多いが、「前略」は、「あいさつとして省略させていただきます」という意味なので、ふつうは、目上の人に対して使うのは失礼となる。ただし、速達のときは使ってもかまわない。逆に、親しい人への手紙は、冒頭のあいさつを省略して、時候のあいさつから入ってもかまわない。
電話でのクレーム対応で、NGワードの筆頭に挙げられるのが、「〜だったようで」。本人はていねいに言っているつもりかもしれないが、「不手際がありましたようで申し訳ありません」では、他人がやったことについて「私は知らないんだけどね」と話している印象を与える。電話の向こうのお客様にとって、あなたは会社そのものなのだ。この場合は「不手際なことで、誠に申し訳ありません」が正しい。当然、反論はこらえ、「おっしゃるとおりでございます」という姿勢が基本。また、クレームというと身構えてしまうが、実は「また利用したいので改善してほしい」という内容のクレームも多い。クレームをつけるにもエネルギーがいるのに、わざわざ助言をしてくれたお客様には、謝罪と同時に「貴重なご意見をありがとうございました」と感謝を述べることも忘れずに。