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挙げ句、ない。またどこかに鍵を落としたのか、とうなだれて座りこんだことも数えきれない。「もしもし、あーカタクラ?あのね、ごめん、鍵忘れたか、どこかに落としたみたい」アシスタントのカタクラ嬢への電話もごくありふれた日常である。そのたびに、お気に入りのドラマ観賞を中断させられるカタクラこそ気の毒の極みだ。が、さすがに冷静沈着な彼女はいささかも慌てず、「いえ、ぜったいにあります。ぜったいです」と、いい、鞄の捜索を命じる。彼女にそう確信されると「ぜったいに」あるような気がしてくる私は、素直にまたかき回す。するとやはりあるのだ。そんなことを繰り返してきたある日、友達の誕生日祝いを買うために出かけたプラダでショルダーバッグにひと目惚れした。やわらかなヌメ色の、どこか野球のグローブを思い起こさせる、2本の持ち手がついたショルダーだ。大ぶりなバックルがついたベルトがまたいい味出している。友達へのプレゼントにはほかのバッグを選んで、すかさず自分にはそのショルダーを買った。このショルダーには、鍵、電話、お財布といったいわば生命線の小物だけを入れて、軽快に街を閥歩しようじゃないか、ね。